【寺社Now27号(令和元年9月発行)】より ※情報は掲載時のものです

石道寺の十一面観音像は国指定の重要文化財。對馬さんは寺を訪れ、観音像の撮影なども行っている

真言宗豊山派 石道寺にて。ここは住職を置かず、地域住民が寺と観音様を守り続けている。当番が観光客に仏像の説明もする。726年開基の石道寺は、戦国時代には信長の兵火、関ヶ原の戦い、明治の大水など幾多の災難に見舞われたが、仏像は村人の手によって守られてきた
観音文化の素晴らしさを地域の思いと共に伝えたい
琵琶湖の北東にある滋賀県長浜市は、仏教文化財の宝庫として知られている。
ことに観音菩薩像が濃密に分布し、集落の数に匹敵するほど多くの観音像が今なお村人たちによって大切に守られている。人々が日々の生活の中で観音さまに手を合わせ、観音さまと共に暮らす、「観音の里」である。
村を守るホトケたち(仏像・神像など)を献身的に守り継いできた民衆による信仰の歴史と、そこに息づく独自の精神文化や生活文化(観音文化)がある。
この地で地域おこし協力隊として活動する對馬佳菜子(つしま・かなこ)さんは、通称「観音ガール」。さまざまなメディアにも登場している。東京で生まれ育った對馬さんは、休日に全国各地の仏像を巡っていた。なかでも特に惹かれたのが、長浜の観音文化だった。
「このまちには、地域の人が観音さまを拝み続けてきた風習があります。そこに魅力を感じて、移住を決意したんです」

※画像クリックでYouTubeへ:滝田栄ナレーション『観音の里の祈りと暮らし』ノーカット版(14分00秒)※滋賀県長浜市「観音の里」動画ギャラリーより

※画像クリックでYouTubeへ:滝田栄ナレーション『観音の里の祈りと暮らし』ダイジェスト版(4分43秒)※滋賀県長浜市「観音の里」動画ギャラリーより
移住までして観音文化の発信に動き出した對馬さんだが、気付いたのは、ホトケさまを拝み、守り続ける地域の人たちと、そこを訪れて眺める観光客とのあいだの、観音さまへの思いのずれだった。
「訪れる人は “美しい” と思って眺めます。一方で地域の人たちは、訪れる観光客が観音さまのいったいどこに惹かれるのかがよくわからない。そこで、まちの風習や観音さまを守る姿ごと伝える必要があると感じました」
そのために、各地区の行事にも顔を出し、少しずつ溶け込んでいった。足を運んで調べ、話し、気付いたことはブログで発信する。観音文化を観光として活用したい行政と、地域の人たちとの橋渡しを務めている。
「地域の人たちが観音さまをどうしたいのか、その思いがまず最優先です。そのうえで、広めていくためのお手伝いをしているのですが、この活動は地域の文化を守っていくことにもつながると思います」
観音ガール(合同会社nagori)
HP:https://kannongirl.com