史上最大規模の岡本太郎展、その名もズバリ「展覧会 岡本太郎」が開幕を迎えた。最近パリで発見された〈推定 岡本太郎作〉とされるホットな作品をはじめ、中学時代のデッサンから晩年までの主要な代表作や重要作が網羅され、20世紀の日本を代表するアート界の巨星の全貌が明らかになる。
それにしても今なお人々を惹きつけ、世代を超えて共感が広がっている岡本太郎(1911-1996)のパッションには驚くばかりだが、寺社Now的な注目は、なんと言っても第3章「人間の根源−呪力の魅惑−」である。
【「展覧会 岡本太郎」展示構成】
第1章 “岡本太郎”誕生―パリ時代―
第2章 創造の孤独―日本の文化を挑発する―
第3章 人間の根源―呪力の魅力―
第4章 大衆の中の芸術
第5章 ふたつの太陽―《太陽の塔》と《明日の神話》―
第6章 黒い眼の深淵―つき抜けた孤独―
パリでピカソ(1881-1973)に衝撃を受け、前衛芸術運動を推し進めていた若き日の太郎は、その一方でパリ大学の民族学科に籍を置き、みずからの出自としての「日本の文化」にまなざしを向けた。1951年に縄文土器と出会い、50年代後半から60年代にかけて日本各地の霊山などを旅して、精力的に写真を撮った。失われた原始日本の面影を見出したのである。
ここで特筆しておきたいのは、太郎の母が歌人であり小説家として知られた岡本かの子であることだ。彼女の創作の源泉には「仏教の精神」があった。「仏教の形を一つもその中に見せずして、しかも仏教の理解と一致する芸術」を追い求めていたことで知られている。
太郎は、否が応でもその岡本かの子の息子である。
今回、本展覧会のレビューのための下準備をしているなかで、日本を旅していた当時にしたためた文章に、かの子の精神に通じる次のようなテキストを見つけた。
密教においては「秘仏」に象徴されるように、あらわにならないがゆえにこそ力である。この神秘力、呪力が芸術においても、実はその本質なのである。(中略)つまり、見せて見せないことである。それは一見パラドキシカルだが、芸術の極意だ。
引用:岡本太郎『神秘日本』(角川ソフィア文庫、初版1964年中央公論社)「曼陀羅頌」より
岡本太郎の作品に〝あらわれているけれど、あらわになっていない本質〟、すなわち芸術の極意と太郎のパッションに触れるべく、中之島の会場を巡りたい。
なお、「展覧会 岡本太郎」は、大阪中之島美術館(2022年7月23日-10月2日)から、東京都美術館(10月18日-12月28日)、愛知県美術館(2023年1月14日-3月14日)へと巡回する。
「展覧会 岡本太郎」開催概要 |
---|
■大阪展:大阪中之島美術館 |
会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日) |
休館日:月曜日 |
大阪会場問い合わせ:大阪市総合コールセンター 06-4301-7285 受付時間:8時から21時(年中無休) |
■東京展:東京都美術館 |
会期:2022年10月18日(火)~12月28日(水) |
■愛知展:愛知県美術館 |
会期:2023年1月14日(土)~3月14日(火) |
詳しくは展覧会 公式サイトヘ 問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル) |