好みはどっち?! 国宝復元!利休の〈わびの茶室〉vs.秀吉の〈黄金の茶室〉…どちらも利休プロデュース!特別展「京に生きる文化 茶の湯」京都国立博物館(10/8-12/4)

京都国立博物館 特別展「京(みやこ)に生きる文化 茶の湯」  開催期間:2022年10月8日(土)〜12月4日(日)、会場風景[撮影:寺社Now]

注目の京都国立博物館「茶の湯」展が絶賛開催中だ。
茶の湯の最高位の茶碗とされる国宝「大井戸茶碗 銘喜左衛門」秀吉が愛用したとされる重要文化財「大井戸茶碗 銘筒井筒」をはじめ、茶道具や書画など名品の数々(全245件、うち国宝・重要文化財110件)。ほかにも国宝・千利休の〈わびの茶室〉と豊臣秀吉の〈黄金の茶室〉が再現・比較展示されているなど話題にはこと欠かない。特にこの再現比較は、歴史的事件とさえ言える。

平安時代、当時最先端の茶を喫する文化が中国から日本にもたらされ、宮廷や寺院で和様化して、やがて日本独自の「茶の湯」は広がっていく。茶道の家元や茶室の多くが京都を本拠としていることからもわかるように、京都は千年以上にもわたってその中心的かつ重要な役割を果たしてきた。

そんな茶の湯の歴史を通観できる画期的な京博の「茶の湯」展だが、寺社Nowは、鑑賞のための一本の補助線を提示したい。それはもちろん「仏教・寺院」というアングルからのまなざしである。

平安時代、最澄永忠空海といった留学僧により、仏教儀礼や薬用としての喫茶の文化が中国からもたらされた。鎌倉時代には、新しい抹茶の技法と茶種を招来して喫茶の薬効を説いた建仁寺開山の栄西禅師『喫茶養生記』により新時代が切り拓かれた。やがて寺院や宮廷を舞台に茶の湯が成立し、江戸時代には宇治・黄檗宗萬福寺開山の隠元禅師が中国から煎茶をもたらし普及するなど、仏教や寺院と茶の湯は、長くそして深い関係にある。

本展会場の展示を、1週目はオーソドックスに展示構成順に鑑賞し、2週目は「仏教・寺院」をキーワードに展示内容を取捨選択・再構成しながら巡回する。寺社Nowは、一粒(一服)で二度美味しいそんな「茶の湯」の楽しみ方をお薦めしてみたい。

〈会場の展示構成〉
序 章:茶の湯へのいざない
京都で「茶の湯」が、いかにして根付き、時代と共にに変化したのかを辿る。
 
第1章:喫茶文化との出会い
奈良時代、中国からもたらされた喫茶文化と日本との出会いを語る。
 
第2章:唐物賞玩と会所の茶
禅宗寺院における規範としての茶が続けられる一方、茶の栽培が盛んになるにつれ、唐物を賞玩する茶や、寺社の門前で参詣者に茶を振る舞う一服一銭が生まれた。
 
第3章:わび茶の誕生と町衆文化
町衆文化の隆盛のなかで、日々の暮らしのなかにある道具を用いた、わびの精神を取り入れた茶が生み出された。
 
第4章:わび茶の発展と天下人
利休がめざしたわび茶は、信長や豊臣秀吉といった天下人も魅了した。武将らがこぞって収集した名茶器の数々。
 
第5章:茶の湯の広まり 大名、公家、僧侶、町人
武家、公家、僧侶、町人のあいだで、それぞれにかたち作られ発展した茶の湯を、独自の茶道具などを通して紹介。
 
第6章:多様化する喫茶文化 煎茶と製茶
江戸時代、黄檗宗萬福寺開山の隠元和尚が、中国から煎茶をもたらし、喫茶文化はさらなる変化を遂げた。喫茶文化の多様化を、宇治地域での製茶技術の向上の様子などとあわせて紹介。
 
第7章:近代の茶の湯 数寄者の茶と教育
明治の文明開化の荒波にのまれ、多くの茶道具が海外に流出した。一方、近代数寄者たちの間で茶の湯が流行し、学校教育にも導入された。

建仁寺・栄西禅師

上)「喫茶養生記」断簡 京都・建仁寺[通期展示]、 下)会場風景・・・建仁寺を開山した栄西禅師が喫茶の風習を日本に伝えた書

▪京都・臨済宗大本山建仁寺ホームページ
 https://www.kenninji.jp/
▪建仁寺と茶
 https://www.kenninji.jp/tea/

六道珍皇寺

「珍皇寺参詣曼荼羅図」 京都・六道珍皇寺 [10月25日~12月4日展示]  門前に茶屋が設けられ、参詣に訪れた人々が炙り餅と茶を飲む様子が描かれている

▪京都・大椿山 六道珍皇寺ホームページ
http://www.rokudou.jp/

萬福寺・隠元禅師

画像中央)隠元隆琦筆・隠元隆琦賛「隠元隆琦像」江戸時代 17世紀 賛:寛文11年(1671)、左端)「紫泥茶罐 宜興窯」京都・萬福寺[通期展示]追い麦秋萬福寺を開山した隠元禅師と愛用した茶器

▪京都・黄檗宗大本山萬福寺ホームページ
https://www.obakusan.or.jp/

比較展示!
茶聖・利休の〈わびの茶室〉vs.天下人・秀吉の〈黄金の茶室〉

会場には、利休が手掛けたと信じうる唯一にして現存する最古の茶室、国宝「待庵(たいあん)」が再現され、すぐ隣に、秀吉がつくらせた「黄金の茶室」が復元・比較展示されている。本展担当の京博学芸部調査・国際連携室、降矢哲男室長によると「どちらも利休のプロデュース」だという。極限にまでそぎ落とされた簡素の美とも言える〈わびの茶室〉と、華美の極み〈黄金の茶室〉とを見比べて見えてくるものとは…。

本展会場の「待庵」は今回の特別展のために再現されたものだが、オリジナルの「待庵」は、京都府大山崎町の妙喜庵に現存する。いつの頃から妙喜庵にあるのかは定かでないようだが、利休が切腹後、秘かに解体保存され、後に利休と縁があった豊興山妙喜禅庵に再建され今に残る。

重要文化財「千利休像」(部分)伝長谷川等伯筆/古渓宗陳賛 正木美術館 [後期展示] 利休の存命中に描かれた唯一の肖像画

 ▪妙喜庵 国宝「待庵」
https://oyamazaki.info/archives/761

▪関連動画(美術展ナビ Art Exhibition JAPAN)

京都国立博物館
特別展「京(みやこ)に生きる文化 茶の湯」
会期
2022年10月8日(土)〜12月4日(日)
開館時間
9:00~17:30(入館は17:00まで)
休館日月曜日
公式サイト https://tsumugu.yomiuri.co.jp/chanoyu2022/
会場
京都国立博物館
住所
〒605-0931 京都府京都市東山区茶屋町527
075-525-2473(テレホンサービス)

 

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監修:全国寺社観光協会

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