寺社の活動そのものがSDGs!地域に果たす役割は無限大【JTB総研:熊田順一主席研究員】

【寺社Now29号(令和2年1月発行)】より
※情報は掲載時のものです

SDGsは寺社単体でなく、地域を面ととらえて取り組むべきもの。では、そのポイントを理解するために必要な視点は何か、また寺社が取り組む意義はどこにあるのか。専門家に解説してもらった。


JTB 総合研究所 主席研究員
熊田順一氏
訪日インバウンド事業および国連世界観光機関(UNWTO)での業務経験を活かし、世界情勢やトレンドを踏まえたマーケティング、ビジネスソリューション、調査を得意とする。SDGsの17の目標の中で、これから観光が果たす役割を「家族」「地域社会」「次世代」と いった視点で考え、コンサルティング方針として掲げる

 

すべての人に関係するから、急速に広まる

SDGsでまず大切なのは「誰ひとり取り残さない」という包摂的な考え方です。核家族化からスタートした孤独死や子供の貧困といった日本の社会的課題を解決するなどの取り組みも含まれます。また、2030年までにSDGsを達成するという期限設定は「今の子供たちが過ごす未来の社会に対して、今の大人たちがきちんと責任を持つ」という仕掛けが組み込まれていることも、注目すべき点です。

SDGs達成によって解決される課題は現代の若者にも他人事ではなく、彼らの未来に直結しています。だからこそ最近は、学校教育の分野でもSDGs教育に関心が高まっており、これから若者たちの間において、ますます認知拡大していくでしょう。

地球上に生きているみんなが他人事ではない。それぞれの立場で、できる貢献を何かしら考えていけるのがSDGsの懐の広さであり、すべての人が自分事に感じられるからこそ、現在急速に広まっているのです。 現状では、既存の活動に課題の番号を当てはめるだけの取り組みもあります。賛否両論ありますが、それでも持続可能性への認識が高まり、その中からSDGs達成に貢献する新たな活動が生まれてくるのであれば、現在の取り組みをSDGsゴールと一時的につなげることも肯定的に捉えていいのではないかと考えます。

ドミノのような連鎖を考えて、無理なく取り組んでいく

どの目標を通じてSDGs達成に貢献するのかは、国や地域によって課題も違います。

まず各地域の課題をきちんと捉えたうえで、どの目標の達成に貢献するかという議論が生まれればいいのではないでしょうか。取り組みの形として理想的なのは、自分が直面している課題を、解決する短期的なゴールと、地域や地球上で起こっている少し長期的な展望で達成したいゴールで考え、自分ひとり(または組織や企業単独)でなく、ドミノを倒すように、連鎖していくシナリオを描くことです。そうすれば無理なくSDGsを取り込めます。

SDGsの17の課題の中から取り組みを選ぶ場合に注意したいのは、各課題の中には169のターゲットがあり、さらに232の指標があること。まずその点をチェックしてから課題を決めたい。総務省のWEBサイトでは、SDGsの各番号にターゲットと指標を加えた表(左)を公表している。ダウンロードも可能

たとえばアフリカで給食制度を導入していくことは、まずゴール2「飢餓をなくすこと」の達成に貢献しますが、給食を出すことで学校に子供が来ることは同時に「教育水準を上 げる」ことにつながり、最終的には「生活の豊かさ」につながっていきます。つまり連鎖して複数の課題を解決できるのです。

そのようなシナリオを大なり小なり自分たちの地域で 描きながら、ぜひSDGsへ取り組んでいただければと思います。

近年は多くの寺社でSDGsの勉強会が開催されています。これがドミノの最初になればいいのです。多くの人が集まり、話し合う場から次のステップが生まれてくれば、取り組みは広がります。

またSDGsは、関わりのあるみんなで協力して課題を解決していくことが重要な要素でもあります。課題の番にはパートナーシップがあります。地域の課題を解決するために地域内の寺社がひとつになり、地域の企業や団体を巻き込んで取り組むことも、寺社が地域に貢献できるきっかけを生み出していくのではないでしょうか。

観光の観点からも解決できることが多い

もうひとつ、SDGsへの取り組みで忘れてはならないのが観光の視点からのアプローチです。

内閣府の地方創生テーマに「SDGs未来都市」というものがあります。ここで課題解決に取り組んでいる都市には、研修や修学旅行などで、SDGsを通じて地域の課題解決への取り組んでいる姿を見に来てもらおうという志向が出ています。つまり地域に名所旧跡など従来型の観光コンテンツが少なくても、SDGs達成への取り組みを軸に新しい訪問目的が生まれつつあるのです。

このような動きが加速すれば、SDGsはますます広まるでしょう。

そこで、日本人にとって心の拠り所である寺社の存在がとても大切になります。歴史的に寺社に人が集ってきたのは、願いや、解決したい何かがあったからであり、寺社は地域の知の集積地でもありました。だからこそ現代では、課題解決の中心にいることが寺社の役割だとも考えられます。

寺社の存在意義に地方創生のキーワードである「住んでよし、訪れてよしのまちづくり」を組み合わせると、旅行者と地域の人が一緒に楽しめる場や機会づくりが課題となります。地域の解決策を考える中心を、寺社が積極的に担う時代になったのでないのでしょうか。

住民だけでなく旅行者を含めた地域づくりでは、外から訪れ、その地域を愛する人々の価値観も含めた評価が、その地域のよさになります。受け継がれてきた文化的な資産を、地域だけの力や財力でなくクラウドファンディングなども含めた外部の力と合わせることで、修復や再建などに必要な資金集めが可能になることもあります。

だからこそコミュニティだけを見ていたまちづくりを、旅行者の存在も加えたまちづくりに変えていくのです。いろんな人を包摂しながらまちづくりや文化、社会を考えることが地域にとってのSDGsの考え方のスタートになりますし、寺社がSDGsの考え方を理解・推進していく大きな理由だと言えます。

■ SDGsの課題解決につながる寺社の活動は多彩

これまで雑誌「寺社Now」で紹介してきた事例(上表参照)のなかにも、SDGsの課題解決につながるものが複数ある。つまり寺社の活動は、そのものがSDGsの課題解決の手段だと言えるのではないだろうか


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