ロリ系のキャラクターデザインに騙されてはいけません。日本の多くのお寺が直面している課題がこの作品に凝縮しています。特に、寺院の継承問題、早い話が跡継ぎ問題にテーマがフォーカスされているんです。
よくドラマや時代劇などで「将軍の跡継ぎをめぐる幕府や大奥内の抗争」「商家のお家騒動」といったドロドロの人間模様ががたびたび描かれますが、あれのお寺版だと思ってもらえれば間違いありません。
きづきあきら+サトウナンキ/作『まんまんちゃん、あん。』の舞台は、土地など資産価値にすると60億円相当の寺院・随徳寺。早く引退したいという現住職と寺庭(妻)には、年ごろの2人の嫡子、長男・信玄と次男・一円がいますが、長男は、結婚や跡継ぎ問題など我関せず。次男には結婚を前提としてお付き合いしている恋人がいるものの、「寺に入るなら別れる」と宣言されていてまったくアテになりません。
そんな状況のなか、寺の将来を杞憂する檀家衆たちが、働き者と地元で評判の女子高生めぐりをお嫁さん候補としてお膳立てし、結局1年の交際の末、高校卒業と同時にめでたく結婚することに。ところが……新婚わずか1カ月で信玄が不慮の交通事故で急逝してしまいます。
「跡取りがいなくなって、寺はどうなるのか……」
若くして未亡人となった彼女を寺に残して誰が結婚して次期住職となるのか。めぐりの気持ちや意思とは関係なく、ここから跡目をめぐるお寺の世界ならではの人間ドラマが展開されていきます。
結婚相手の候補は3人。先述した恋人のいる次男坊・一円。めぐりにいつしか恋心を寄せる在家出身の純真な修行僧・恵春。檀家総代が寺を思いのままにしようと送り込んだイケメン僧侶・慈恩。随徳寺に土地など60億円相当の資産価値があるのも総代の動きの背景にあります。
とまあ、〝ジェンダーの平等〟がSDGsの目標となっている現代にあって、いかにもな前近代的な物語の設定ではありますが、でも、この作品が描いている世界はけっして過去の時代の話ではなく、現在進行形のお寺のリアルだったりするんです。作者も周到な調査をしたようで、お寺のリアルを知っているとより楽しめると思います。
読解のポイントは2つ。
①:お寺の嫁(!)不足
②:お寺は世襲ではない