「人は死んだら、どこに行くのだろう?」
寺社Now的に注目の!そして待望のエキシビジョンが開幕した。大阪・中之島フェスティバルタワー・ウエスト内にある中之島香雪(こうせつ)美術館の企画展『来迎(らいごう) たいせつな人との別れのために』がそれだ。
【会期:2022年4/9(土)~5/22(日)】
太古の昔から人類が抱き続けてきた「人は死んだら、どこに行くのか?」という根源的な問い、あるいは不安や恐怖に対する仏教的な一つの解答……そのキーワードが、本展のタイトルにもなっている「来迎(らいごう)」である。
「来迎」とは、文字通り「お迎えが来る」こと。
南無阿弥陀仏と唱えれば、臨終に際して阿弥陀如来が菩薩たちを率いてお迎えに来てくれる。そして遙か西方にある極楽浄土へといざなってくれる。この浄土信仰は、中国唐代を起源として日本に伝来し、平安時代の貴族社会に定着、鎌倉時代には広く庶民にも広まった。
この「お迎え」のシーンを描き、浄土信仰を広める文化的装置としての役割を果たした仏画が「来迎図」であり、向かう先の極楽浄土の様子を描いているのが「浄土図」だ。旅立つ者も、見送る者も、大切な人との別れに際して、浄土信仰に救いを求め、恐怖から免れ、安堵と希望を見いだそうとしてきた。
世界は混迷を極め、疫病や戦争により生と死が不用意に交錯する。
人々の死生観や他界感は大きく変容し、死者を見送る臨終の作法や葬送の儀礼もさまがわりしてきている。そうした時代の変革期にある今だからこそ、『来迎——たいせつな人との別れのために』と題した本展から見えてくるものがありそうだ。
香雪美術館は、明治期に日本の文化財が海外流出するのを食い止めようと私財を投じた朝日新聞創業者・村山龍平(号「香雪」、1850-1933)のコレクションを核として活動している。村山の膨大なコレクションには、浄土信仰の美術が数多く含まれており、本展では、京都・三千院ほかの関連する貴重な文化財も交えながら、同館所蔵の来迎図や浄土図を一堂に公開している。中には、近年修理を終えたばかりの「帰来迎図(かえり・らいごうず)」などもあり、修理完了後の姿を観ることができる初めての機会となる。
かくして本展開催中、中之島香雪美術館が、来迎(お迎え)の一大エキシビジョン会場となる。
〈目次:展示構成〉
第1章「源信の来迎図」
第2章「円陣来迎の系譜」
第3章「観音と地蔵の来迎」
第4章「浄土を想う」
第5章「それぞれの来迎の夢」
第6章「たいせつな人との別れのために」