第1章:源信の来迎図
平安時代の中期、貴族を中心に末法(まっぽう)思想が流行した。これは、釈迦入滅後1500年となる永承7(1052)年を境として、釈迦の正しい教えが廃れ、国土も人心も衰退していく「末法」の世に突入するいうもの。そうした時代背景の中で、末法の世から脱却し、理想の世界「浄土」へと生まれかわることを切実に希求する「浄土信仰」が隆盛した。
この浄土信仰とその後の日本仏教の展開に多大なる影響を及ぼしたのが、天台宗の学僧・源信が著した極楽浄土へ往生するための指南書 『往生要集(おうじょう・ようしゅう)』である。「来迎図」も源信が創案し、自らも描いたと伝えられている。本展第1章は、源信にまつわる来迎図からスタートする。
第2章:円陣来迎の系譜
来迎図に、「円陣来迎」と呼ばれるジャンルがある。阿弥陀如来のまわりを菩薩が取り囲むようにして来迎する様子から付けられた通称だ。観音菩薩と勢至(せいし)菩薩、およびそれぞれに楽器や供養具を携えた25人の菩薩たちが、中央にひときわ大きく表現されている阿弥陀如来をぐるりと円く取り囲んでいる。第2章では、円陣来迎図の系譜をたどる。