▪子どもたちと川や田んぼで遊んだ「いも観音さん」
安念寺に住職はおらず、10戸の村人たちによって守られている。毎年8月上旬に行われる千日参りでは、西黒田の村人が安念寺に集い、般若心経を唱える。
昭和初期までは千日参りの日に、西黒田の子どもたちは村を流れる余呉川に「いも観音さん」を運び出し、浮き輪のように浮かべて遊んでいたという。また農繁期には田んぼの畦に運び、子どもの遊び相手を「いも観音さん」にしてもらったとも伝わっている。
「痛々しいお姿と思われるかもしれませんが、私たちは幼い頃よりこのお姿で見守っていただいていますので、とても親しみ深く優しいお姿だと思います。自分の命も危ない時に、昔の人たちは命懸けで観音さんを守ってきたのだから、これからも大切に守っていきたいですね」
「いも観音さん」を拝む時は、何かお願い事をするというより「いつもお守りいただきありがとうございます」という「日々の感謝、お礼を申し上げている」と言った方が近い、と村人は言う。崇め奉るような遠い存在ではなく、日常生活の中に溶け込み、変わらず村人たちの心の拠りどころであるから、守り継がれてきたのだろう。