壁画展開図の作成
壁画表面の色彩は、高解像度画像を印刷した和紙を貼りこむことで再現した。窟壁画部分は単純な幾何学形状ではなく、有機的に歪んだ曲面形状をしている。そのため立体造作の表面に和紙を正確に貼り付けるには綿密な3Dシミュレーションが必要となる。
まずは、和紙をどの位置にどのようなサイズで貼るかを設計した[図10]。設計はリトポロジー(高密度の3Dデータを単純化する作業)とベイク(3Dデータのもつ色情報を転写する作業)という技術を応用して行った。
紙の合わせ目となる部分が、壁画に描かれた仏の御顔などの重要な図像に重ならないよう検討した。壁画の形状を細かく拾おうと、カットラインを増やしすぎると、紙の合わせ目が増えることになり仕上がりに影響する。そのため、和紙の伸びを加味しつつ最低限のカットラインで済むよう意識した。
次に、シミュレーションしたデータを元に展開図の作成を行った。展開された図像のアウトラインは造作物の凹凸を拾って複雑な形状になっている[図11]。
この作業で得られる展開図は印刷に耐える解像度が確保できない。そのため、高解像度画像を展開図に合わせ編集し、最終的な印刷データを作成した。