未来からの逆算!バックキャスティング〜SDGsとスーパークローン文化財【東京藝術大学大学美術館「みろく展」開催記念特集⑤】

SDGsの特徴として、未来の姿から逆算して今何をすべきかを考える、バックキャスティングというアプローチがある。前例を改善するという従来のやり方を捨て、抜本的に異なる新しい発想を行動に移し、壮大な目標を達成しなければならない。

一方、現在の文化財保護の考え方では、何も足さない、何も引かない、ということを原則として、オーセンティックな価値を守り、後世に伝える、ということを理想としている。また、作品を修復するという行為自体が、作品にリスクと負担をかけるため、予防的に将来の劣化・損失を回避および最小化することを目的とするpreventive conservationまたはcollections careという予防保全が世界標準となっている。

その中で、クローン文化財の活用は、予防保全のプラグマティックなアプローチとしての実践であり、その認知を広げることに成功した。また、スーパークローン文化財は、失われた文化財の損傷部分の復元も可能にすることで、何も足さない、何も引かない、という従来の枠組みを超えた文化財の新たな見せ方を提示した。文化財の美的価値と歴史的価値を保存しつつ明示するという目的を積極的に実践している。

そして、更にこれから2030年に向けて文化財保護と活用についてどのようなあり方を理想とするか、社会、環境、経済のつながりからバックキャスティングで考える必要がある。内閣府は2050年を目標に、新技術による人の能力拡張により、若者から高齢者までを含む様々な年齢や背景、価値観を持つ人々が多様なライフスタイルを追求できるSociety5.0の実現を推進する。

しかし、今後も発展するさらなる革新的な技術に囲まれた生活様式のなかで、果たして人は様々なライフスタイルを追求するのだろうか。アルゴリズムやAIの急速な発展により合理的かつ利益優先の情報を受け取るように操作されていくなかで価値観が均質化されるのならば、より一層文化やアートの必要性は浮き彫りになるだろう。

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監修:全国寺社観光協会

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