空き家活用で地域活性を。千葉県・家之子八幡神社の挑戦!神と人、人と人をつなぐ民泊宿坊

千葉県の九十九里浜に近い東金市。ここは鎌倉幕府倒幕の功労者である護良(もりよし)親王の娘・華蔵(けぞう)姫が移り住んだ伝説や、徳川家康の鷹狩り御殿があったことで知られるなど、歴史に彩られた地域だ。しかし近年は住人減少により活気がなく、増えた空き家で放火事件も起こった。
この町の姿を憂い、地元が大好きだからこそなんとかしたいと立ち上がった女性宮司がいる。
彼女が民泊宿坊を開設し、そこを舞台に地域の人も巻きこんで活動することにした熱い思いとは—。

華蔵姫伝説の地にある家之子八幡神社の中嶋祐子宮司は、東金市をはじめ近隣市町の36社を兼務している。地域の声を聞く中で、地域を元気にしたいと考えるようになり、兼務社のひとつで竹灯りイベントも開催もしている。

宮司が自ら活動することを思い至ったのは、町を気に入ってくれる人を増やさなければ活気は取り戻せない、ということだった。

家之子八幡神社近くの民家を宿坊に

「自然豊かで歴史ある地域なのに、活気がないのはとても寂しいことです。そこで、増えた空き家を活用することで、人が訪れる町にしたいと考えました。空き家を改装して民泊ができれば、空き家対策と地域活性化を同時に実現できるのではないかと思ったからです」

しかし、地元の人を巻き込むにも周辺地域で先例がなく、また民泊への理解不足や収益面での不安などから、なかなか賛同者が増えない。

「それなら自分の活動を成功事例にしよう。成功するとわかれば地域の人も参加してくれるようになり、活動が拡がるのではないかと考えました」

國學院大学卒業後、埼玉県内の神社奉職を経て八幡神社第36代宮司となった中嶋祐子宮司。指先にいるマメルリハインコのアジサイは巫女鳥。兼務社が多いため、宿泊利用は中嶋宮司が対応できる日だけに現在は限定している

宿ができただけでは駄目。成功のカギは体験内容の充実

神社の近くに叔母が暮らしていた空き家があり、そこを一日一組限定の宿に改装した。利用者に「おばあちゃん家のいいとこ取り」と言われたこともあり、まさにそこをめざすことにした。

建物は平屋の一軒家。裏に畑を整備し、農業体験も始める予定。周辺は田園風景や森が広がり、のどかな環境に囲まれている。「宿泊される方には周辺の散歩もおすすめしています」

「田舎のおばあちゃん家に帰省するように、気軽に利用できる場所にしたい」と言う宮司だが、民泊を始める際に、体験内容を充実させることも重視した。

「家を改装する際に、叔母の着物や昭和レトロなワンピースが出てきたので、宿泊者が自由に着られるようにしています。ゆくゆくは地域のおばあちゃんたちに着付けを手伝ってもらおうと考えています。ほかにも、東金伝統の太巻き寿司の料理体験を始めて、おばあちゃんたちに手伝ってもらえれば、普段一人で食事をしているおばあちゃんが利用者と一緒に食事ができる機会も持てると思います。地域との触れ合いを充実させて、“ここ、いい所ですね”という感想がもらえれば、地域の方も地元を誇りに思えるようになるのではないでしょうか」

玄関を入ると畳の間が広がる。宿泊以外に、地域の人の集まりなどにも利用してもらっている

和室だった場所を広々としたリビングに改装し、くつろいでもらえる場所にした

シングルベッドを2台置いた寝室が玄関脇に。朝の光が心地良い

自炊可能なキッチンも新調。食器は祖母が使っていたものを活用している

リビング横の廊下には着物や昭和レトロな服が並ぶクローゼットがあり、宿泊者はどれでも自由に着られる。近隣の人から着物の寄贈もあるそう

少しずつでもいい、とにかく地域を巻き込みたい。

「手伝ってもらうことが増えれば、ささやかですが地域の雇用も生み出せます。神と人との間を取り持つ神主ですが、人と人との間も取り持っていきたい」

さらに、自らが案内人となり地域の神社巡りも始めたいと宮司はいう。民泊をきっかけに、地域のためにできることを実践していく。

兼務している八坂神社では、東金の竹を使って竹灯籠のイベントを主催している。ここは地域で天王様と呼ばれ、年間何万人も参拝者があった神社。最盛期は50近くあった天王講はすべてなくなり、祭りの屋台もかなり規模が小さくなっている。その状況をなんとかしたい、人が集まる神社に戻ってほしい、と考えてのこと。今後は御神木の下でヨガ+お祓いも計画中


家之子八幡神社 華蔵〜KAGURA〜

〒283-0001
千葉県東金市家之子1658
TEL:0475-52-3797
HP:www.kagura-ienoko.com


 


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監修:全国寺社観光協会

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