潜入!お坊さん向けキャリアスクール完結編|モダン宿坊〈禅の湯式〉経営&地域の課題解決3つのヒント

ということで、前編では下記(1)(2)を取り上げたが、後編では(3)について解説する。宿坊の運営が寺院の存続につながっているだけでなく、過疎化が進む地域にも好影響をもたらしている仕組みについて共有したい。

(1)寺院会計と家計を分離:宿泊業のインカムで過疎地でも寺院を護持
(2)「育する」のヒミツ:禅の湯式!選ばれるコンセプトのつくり方
(3)移住&ダブルワークをサポート:過疎地が元気になる仕組みづくり

「禅の湯」稲本雅子代表は地方金融機関出身。数多くの会社のリアルな浮き沈みをを見てきた経験を活かして、両親から継承した宿坊の事業再構築を手掛け、現在はスタッフの夢を育するサポートもしている

移住者の定着をサポートし、過疎地域に若者を増やす

3つ目のポイントは、移住を希望するスタッフが定住できるよう支援することで、禅の湯が過疎化や高齢化が進む町の課題解決に寄与していることにある。

この取り組みの出発点として、スタッフの雇用がある。禅の湯では、従業員を雇う際も「育する」が基準。「伊豆で自分の商売を持ちたい」といった“育したい夢”を持ち、その夢の実現と宿の仕事との兼業ができる人を採用している。そこには、伊豆にやってきた人が長く生活していけるように、といった思いがある。

「育する」雇用で禅の湯にジョインしたスタッフたち。宿の仕事を通して多種多彩な夢が実現している(講座資料より)

禅の湯が立地する伊豆半島全体としては観光業が主たる産業となっているが、自然災害など外部環境に客足が左右されやすく、経営側も従業員側も不安定だ。禅の湯では双方がそうしたリスクを回避するために、スタッフが自分の商売も持ってダブルワークすることを採用条件としている。

採用されたスタッフは、禅の湯の仕事で生計を立てつつ、自分の事業を構想し、その実現に向かって準備する。その際、商いの仕方に悩む人には、自営業の家庭で育ち、地方金融機関出身で経営のプロでもある稲本代表が、ビジネスの仕組みづくりについてサポートする。

彼女の助言を受けて、スタッフは自分自身の事業を育していき、やがて禅の湯を巣立ち、自分の店や起業した会社の経営に専念していくことになる。カフェの開業など宿泊客にも紹介できる新たな名所ができ、地域に賑わいも生まれてくる。

曹洞宗 慈眼院(静岡県河津町)は、 古くから参拝者や旅人を泊める峠の宿として機能していた。幕末に初代駐日総領事タウンゼント・ハリスが、日米修好通商条約締結のために伊豆下田から江戸へ赴く道中に一泊したことでも知られている。本堂の右手に見える白い壁の建物が「モダン宿坊 禅の湯」

慈眼院「モダン宿坊 禅の湯」は、コロナ禍にあっても宿泊客が絶えることがない

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監修:全国寺社観光協会

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