※情報誌『寺社Now』第30号(令和2年3月発行)をもとに再構成
岐阜県高山市の飛騨千光寺(高野山真言宗 )は、約1600年前に飛騨の豪族・両面宿儺が開山したと伝えられ、その後約1200年前に真如親王が寺院を建立した名刹である。海抜900メートルの袈裟山に広がる境内の奥には、明治時代に設けられた「山内八十八カ所巡礼の遍路みち」がある。この遍路みちで、平成29(2017)年から年に一度開催されている「飛騨千光寺88トレイル」が評判だ。開催には、なるほど納得な未来を見据えた2つの理由があった。
信仰の巡礼道を 年に一度 ランナーが駈け抜ける
「高山市では約100㎞を走破する飛騨高山ウルトラマラソンが開催されており、当山もそのコースの一部です。檀家にもランナーがいて、あるとき、うちでも独自にやってみようかという話になったのがきっかけです」
と語るのは、飛弾千光寺の大下大圓住職。
そうは言っても、すでにあるウルトラマラソンと同じようなランイベントでは、あえて寺が開催する意味はない。
「健康寿命を延ばすためのお寺としての活動。そのためにスポーツと信仰を重ねることが、お寺がトレイルランを主宰する理に適った形だと考えました」
さらに、トレイルランの開催には、もうひとつの理由があった。