文:金山智子 KANAYAMA,Tomoko
情報科学芸術大学院大学[IAMAS]メディア表現研究科教授
「花手水研究会」主宰
岐阜県不破郡垂井町にある南宮大社(なんぐうたいしゃ)は、〝鉄鉱を司る神”の金山彦大神を主祭神とする全国の鉱山・金属業の総本宮で、古くより信仰を集めている。広い神社に奉納された鋏や包丁、鍬や鉈などの鉄器や金属製品が〝金属の神様”らしさを感じさせる。
参拝者減少を心配していた神社では、参拝者に楽しんでもらえるなら、また、参拝のきっかけになればと、花手水を2019年の11月から始めた。毎月1日と15日の月次祭が一般参拝者も多いことから、この日に開催されるようになり今日に至っている。
始めた当初、手水にどのように花を立てたら良いか分からず、保存会の人たちが宮司や職員と一緒になって試行錯誤を続けた。南宮大社の花手水のトレードマークとも言えるハート型も、初めはハンドメイドだった。花の立て方は、竹に穴を開けたものや瓶などに工夫を凝らした結果、現在の形に辿り着いた。
花手水を始めて2年、今では周りの人たちにも広く知られるようになり、1日と15日の開門時には、写真撮影のために訪れる人たちが待っていることも。花手水は正門と北門の2箇所で開催されているが、北門にある花手水は門の外にあるため、閉門後でもカメラでパシャパシャと撮影する音が神社にまで聴こえてくるそうだ。
南宮大社の花手水が根付いたことは、「南宮大社」とネット検索した際に「花手水」が検索候補に出てくることで実感できると権禰宜の荒井寛巨さん。花手水を始めた当時から、南宮大社ではInstagramを使って、花手水の写真を配信した。
当時は荒井さん自身が撮影担当で,夜遅くまで何枚も撮影した中から選んでアップしていた。現在は女性職員が撮影と投稿を担当し、SNSを通した情報発信を重要と位置付けて継続している。花手水を始めてから、“インスタ映え”の効果もあり、若い年齢層(特に女性)が増えた。愛知や三重など県外から見に来る人も増えている。
「花手水やり始めてから、朝、インスタを見て来るようになった。1日と15日は夜まで開いているし,前よりも来る回数が増えた」と話す人たちもいて、地元住民や氏子の参拝頻度が急増している。