想いを隠さず伝えたことが成功につながったクラウドファンディング
神社の再興に取り組むなかでわかってきたのは、“お金がいる” という事実。そこで辻さんは、クラウドファンディングで浄財を募ることにした。
「クラウドファンディングへの挑戦は、奈良県にある葛木御歳神社(かつらぎみとしじんじゃ)の東川(うのかわ)宮司の影響を受けて決めました。東川宮司は何年も前にクラウドファンディングを活用して神社の再興に取り組み、見事に成功されていて注目していたんです。
とはいっても、やると決めるまでには迷いもありましたよ。『誰も寄付してくれないのでは』『失敗したら恥ずかしい』といった不安にさいなまれていました。でも、動き出さなければ状況は一向に変わらない。今一度自分が何のために白川に帰ってきたかを思い出し、腹をくくったんです」
決意を固めた彼女は、地域の方々にクラウドファンディングを提案。しかし、返ってきたのは想像よりも薄い反応だった。
「熱っぽく説明しても、ほとんどの方が苦笑いでしたね。『東京から帰ってきたばかりで、急に何を言い出すのか』『こんな田舎の神社に寄付してくれる人なんて、本当にいるの?』などと、みなさん戸惑われたのでしょう」
しかし、彼女は諦めない。SNSで情報を発信したり、知人に連絡をとったり、所属するオンラインコミュニティの仲間に意見を求めたりと、さまざまな方法で実現に向けて一歩を重ねていった。
すると、次第に協力者が集まってきた。
まずは、クラウドファンディングのサイトに掲載する文章を見た広告業界の男性が、厚意で文章を添削してくれた。また、オンラインコミュニティで知り合った女性は、寄付へのリターンとなる製品づくりを手伝うだけでなく、焦りがちな辻さんをなだめて精神的にも支えてくれた。さらに、クラウドファンディングをきっかけに國崎八幡神社を知り、実際に足を運んでくれた方もたくさんいた。
「クラウドファンディングで得られたのは、お金だけではなかったんです。たくさんの方とご縁がつながり、応援の言葉やアドバイスをもらいました。不安だったけれど、思いきってやってよかったと心から思っています」
もちろん、最大の目標だった寄付金もしっかり集まっている。当初は200万円をゴールに設定していたが、フタを開けてみれば、初日に目標の半額100万円を突破し、なんと開始3日目でゴールに到達、ネクストゴールとして倍額の400万円を設定して最終的には415万円もの支援金が集まった。さらに加えて地元企業からは100万円の奉賛金が寄せらるというサプライズも。おかげで、社殿や境内を以前とは見違えるほどの姿に変えることができた。
「SNS上やメールなどで事前にたくさんの方から『応援しているよ』と声をかけてもらっていたのですが、受け付けがスタートしてすぐに実際に1万円が寄付されたときは、うれしくて号泣してしまいました。そこからあっという間に金額が積み重なっていってようやく、助けてくれる人って本当にいるんだと実感できたんです」
こうして成功裏に終わったクラウドファンディング。その要因を、辻さんはこう振り返る。
「自分の本心を隠すことなく伝えたことで、たくさんの方々に想いが届いたのだと思っています。『もっと白川で遊びたい! そのために絶対に神社を再興したい』と正直に発信しましたから。
今回、自分が本当に大事にしたいこと、 “白川で遊びつくすこと” を明確にしました。そしてそのことを大切にする自分自身を認め、許してあげたんです。大人だから、親だから、女性だから、こんなことしちゃだめ……そういう思い込みはいったんすべて捨てて、自分の気持ちをありのままにそのまま受け入れてみる。これができれば、人生の可能性はきっと広がっていくと思ったんです」