文:佐々木悦也(高月観音の里歴史民俗資料館 学芸員)
11月17日(水)から展示するのは、「天女の羽衣伝説」で知られる余呉湖畔の川並集落の地蔵堂に伝わる2臂(編集部注:腕が2本)の聖観音像。本像を安置する地蔵堂は、「子安の地蔵さん」と親しまれ、広く信仰を集めている。
ヒノキとみられる1材から彫り出し、内刳(うちぐ)りは施さない。腰をやや左にひねり、台座上に立つ。左手は肘を曲げて胸前で蓮華を執り、右手は垂下して掌を前に向ける。条帛(じょうはく)・天衣(てんね)・裳(も)ともに輪郭のみあらわし、衣文(えもん)線をすべて省略する点に特色がある。また、「像表面には、柿渋を塗った」との伝えがある。
奥行のない胸、愛らしい丸顔で穏やかな相好、なで肩、肉付けを抑えた体躯の表現などから、平安時代も後期、12世紀の制作とみられる。
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