破損・消失した文化財がよみがえる新技術!東京藝術大学「クローン文化財」の秘密に迫る

排他的な時代だからこそ、文化財で知る多文化世界

このクローン文化財の意義について、プロジェクトを率いる東京藝術大学大学院の宮廻正明(みやさこまさあき)教授はこう語る。

「世界中の名品に接することが可能になるのがクローン文化財です。また破損や消失などによって失われてしまった美術品も復元ができます。しかも制作当時の状態まで遡って復元することもできるので、従来のレプリカとは異なった付加価値を生み出せます。世界に点在する画家の作品を全てクローン文化財で再現して一同に展示することもできるので、これまでの美術館、博物館の展示にも大きな影響を与える可能性があります」

このように、文化財を「モノ」として再生するだけでなく、臨場感まで再現してその精神性や意図までもイメージさせることは、「モノ」が壊れても「ココロ」は残り続けることも示唆しており、紛争やテロによる文化財の破壊行為に対するカウンターメッセージでもあることは間違いない。

法隆寺の金堂壁画とバーミヤンの壁画は、シルクロードでつながる東西文化の多様性の結晶といえる。このクローン技術による再現や復元を通して、あらためてその価値の高さを社会全体で考えるきっかけを与えるに違いない。それは、文化財を広く社会に知ってもらう場合に常に投げかけらる「保存と公開」という問題へ一石を投じる新しい技術と言えよう。

クローン文化財であれば、展示物に実際に触れることも可能となる

【寺社Now17号(平成30年1月発行)より】 ※情報は掲載時のものです


<取材協力>

東京藝術大学 COI(センター・オブ・イノベーション)拠点
http://Innovation.geidai.ac.jp/

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監修:全国寺社観光協会

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