“育(いく)する”温泉宿坊を発見した。
地域が育ち、人が育ち、そして宿泊客がくつろぎ、喜ぶ、笑顔あふれる豊かな時間と空間。
静岡県賀茂郡河津町。伊豆半島のほぼほぼ先端に近いこの町は、河津桜発祥の地であり、またノーベル賞作家・川端康成の代表作『伊豆の踊子』や演歌歌手・石川さゆりの名曲『天城越え』の舞台にもなった山あいの温泉地として知られている。清流を活かした山葵(わさび)の産地としても名高い。
だがしかしその一方で現在は、全国各地にある過疎化が進んでいる町のひとつでもある。
そんな河津の天城峠へ向かう山道に、鎌倉時代創建と伝わる慈眼院(曹洞宗)が佇んでいる。その境内に、モダンな建築の〝育する〟温泉宿坊「禅の湯」がある。寺社Nowは、この「禅の湯」が寺院が地域活性の一翼を担うモデルケースとの噂を頼りに、経営者でもあるお寺の娘、稲本雅子さんを訪ねた。
そして知った。そこがただの温泉宿ではなく、夢を〝育する〟宿であることを。

〝育する〟温泉宿坊「禅の湯」のスタッフは、地元スタッフと移住あるいは移住予備軍の混成チーム。それぞれがそれぞれの夢を育していて、自然な笑顔にあふれている。宿泊客もおのずと笑顔に!

慈眼院「モダン宿坊 禅の湯」

宿坊の裏山から撮影。手前に見える瓦屋根が慈眼院、中央の白壁の建物が禅の湯の宿泊棟。一見すると段々畑が連なる山あいの温泉宿にすぎないが…