美術の殿様・細川コレクション
飄々と笑いを誘い、ゆるふわっと教えへと導く仙厓さん。
永青文庫(東京文京区)の「仙厓ワールド ―また来て笑って!仙厓さんのZen Zen 禅画」が開幕した。2016年に美術ファンを驚かせた「仙厓ワールド―来て見て笑って!仙厓さんのゆるカワ絵画―」展につづく第2弾だ。そえゆえに副題で「また来て笑って!」と呼びかけている。
江戸時代の後半を生き、“仙厓(せんがい)さん”と親しみを込めて呼ばれた仙厓和尚は、江戸中期の白隠(はくいん)と並ぶ禅画の大家として著名だ。素朴で味わい深く、軽妙洒脱で天真爛漫、飄逸で親しみやすい。「〇△□」の図形だけをしたためた禅画でつとに有名だ。
仙厓のコレクションとしては、東京・出光美術館と福岡市美術館にまとまったものがあるが、永青文庫にて2016年に開催された「仙厓ワールド」第1弾において、“美術の殿様”として知られる旧熊本藩主・細川家16代当主、細川護立(もりたつ、1883-1970)のコレクションが初公開され、その全貌が明らかになり評判を呼んだ。今回は、そのうちの選りすぐりの作品が改めて公開されるほか、仙厓周辺の禅僧による書画などこれまでほとんど取り上げられる機会のなかった知られざる禅画もあわせて展示される。
美濃国(現在の岐阜県)に生まれ、武蔵国永田(現在の神奈川県横浜市)の東輝庵(現在寶林寺に合併)で月船禅慧(げっせん・ぜんね)に学んだ仙厓は、39歳で福岡博多にわたって臨済宗の開祖・栄西(えいさい/ようさい)が開いた聖福寺に住し、同寺の復興に努力した。そして60歳を超えてから書画の才をあらわし、地域の人たちと交流し、あらゆる人々の求めに応じて即興的に筆を振るった。
仙厓は、生涯に3度、高僧の証である紫衣(紫色の法衣)を中央から推挙されながらそれを拒み、民衆と同じ粗末な木綿の黒衣を身にまとって生涯をすごしたという。本展は、禅画を通じてその人柄に触れ、生き方に学ぶ絶好の機会ともなる。それも、思わずニヤリと笑みを浮かべながら。
▪禅画とは
江戸時代以降の禅僧が描いた絵画のことをいう。画題は、禅宗の始祖・達磨図、各宗派の重要な僧を描いた祖師図、禅の修行や悟りの瞬間などを絵にした禅機図、釈迦図や観音図といった仏画、布袋をはじめとする福神図のほか、風景画、動物や植物を描いたもの、市井の人々を題材にしたものまでさまざま。特に白隠と仙厓は、幅広い画題を手がけており、バラエティーに富んだ禅画を数多くのこしており、近年人気が高まっている。
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▪細川護立と禅画
永青文庫の設立者・細川護立(1883-1970)は、16歳の頃に肋膜を患い、療養中に白隠慧鶴の『夜船閑話』を読んだことをきっかけに、白隠作品を集め始めた。護立は自ら白隠ゆかりの地を巡りながら蒐集を進め、大正10年(1921)には自身の白隠コレクションを公開する展覧会を開催。翌年、主要な出品作140点余りをまとめた豪華な画集『白隠墨蹟』を刊行している。護立の禅画蒐集は白隠のみにとどまらず、弟子の東嶺円慈や遂翁元盧、さらに仙厓義梵と誠拙周樗など、近世禅僧の書画を幅広くコレクションした。さらに書画とあわせて禅僧遺愛の品々も入手しており、本展では、仙厓の手がけた茶杓や誠拙旧蔵と伝える茶碗と水滴も紹介されている。
【永青文庫】「仙厓ワールド−また来て笑って!仙厓さんのZen Zen 禅画−」
会期 | 前期:2022年5月21日(土)~6月19日(日) 後期:6月22日(水)~7月18日(月・祝) |
開館時間 | 10:00~16:30 (入館は16:00まで) |
料金 | 一 般:1000円 シニア(70歳以上):800円 大学・高校生:500円 ※中学生以下、障害者手帳をご提示の方及びその介助者(1名)無料 |
休館日 | 月曜日(ただし7/18 は開館) 、6/21(火) |
公式サイト | https://www.eiseibunko.com/exhibition.html |
会場 | 永青文庫 |
住所 | 〒112-0015 東京都文京区目白台1-1-1 03-3941-0850 |
ホテル椿山荘東京 |