まちの未来を憂える宿坊の女将の思いに自然と結集したメンバーたちの多彩な個性が、迎賓館えびす屋で結実しようとしている。常に考え、浮かんだアイデアを形にするための方法を追い求め、そしてただひたすら試行錯誤を重ねて実践するという、ささやかだが愚直な行動力が、人を変え、まちを変えるきっかけとなっている。
しかしなぜ、そこまで頑張れるのか。
「身延山にはもともと、人を受け入れる空気があったんだと思っています。もちろん山内のどの宿坊も、そういったフレンドリーさや、おもてなしの心があり、それこそが私たち身延山の最大の良さだと今でも思います。
ところがいつの間にか、山全体が元気をなくしてしまいました。活気を取り戻し、身延山の歴史を未来にも伝えていくためには、昔からのこうした良さをもっと提供していくべきではないかと考えました。
しかし、全員が身内のようなこのまちで、中の人間である私のような女性が声を大にしても、なかなか町内の人の心は動きません。ところが、外から身延山にやってきて、この土地の良さを感じてくれた若者たちが頑張っている姿は、まちの人にもかなり響いたようです。うちの若いスタッフや外国人スタッフに気さくに声をかけてくれる地元の方々がずいぶん増えてきたように感じます。
このまちのためにと思って動いていることを、若い人たちがみずから率先して手伝ってくれる。そうした彼らの日々の積み重ねと頑張りが、このまちに少しずつ変化を生み出しているような気がします。でも、まだまだです。もう少しだけ、私も止まらずに頑張らないと(笑)」
思いに惹かれて集まった仲間たちの存在が、今度は純子さんの原動力になっている。そこに、素敵な循環が生まれていた。
純子さんとプロジェクトメンバーの挑戦は、まだ始まったばかりだ。迎賓館えびす屋のすぐ隣に、廃業した温泉旅館が寂しげに佇んでいる。すでにこの敷地と建物もとびきり格安で手に入れた。この温泉旅館をリニューアルして、宿坊街の拠点となるビジターセンターを創る。さらに、山内の売店を新たな施設として生まれ変わらせることも考えている。まちをよみがえらせるためのビジョンは尽きない。
思いが人を呼び、人が人を呼び、そして人がまちを動かしていく。
回り出した車輪は、もう止まらない。
古民家オーベルジュ「迎賓館えびす屋」
住所:〒409-2524 山梨県南巨摩郡身延町身延3955
電話:0556-62-0014
■農caféZENCHO
■覚林坊
■Kakurinbo Temple Beer