■山から降ろされた観音さま
かつて、正妙寺がある西野の集落から山を隔てた琵琶湖岸に「阿曽津(あそづ)」と呼ばれる大きな集落があったそうです。阿曽津は、地震・津波によって一村ごと湖中に沈んだといい、難を逃れた村人たちは山を越え、西野・松野(現松尾)・熊野・東柳野・柳野中・西柳野・磯野の七ケ村に移り住んだとのこと。阿曽津の土豪の子孫、阿曽津秀道の内室の守護仏である千手千足観音像を安置するため、寛弘年間(1004~12)に観音堂は建立され、湖東山正妙寺と号したと伝えます。
正妙寺は、西野集落の北はずれ、日枝神社の上手、山の中腹に建っていましたが、観音像の防犯・防災・護持管理等の関係から、平成29年(2017)1月、山から降ろされ、西野集落の中ほど、充満寺の飛び地境内である薬師堂横の旧堂(現・正妙寺)に遷されました。現在は、薬師堂の薬師如来像と十一面観音像(いずれも重文)とともに拝観できるようになりました。
『見仏記』で知られる作家・イラストレーターのみうらじゅん氏もこの像を愛し、DVD『The Very Best of TV見仏記~振り返りトーク・セッション スペシャル~【驚愕の異形仏編】』の表紙にも登場しています。
2022年(令和4)1月12日(水)より東京長浜観音堂にて展示されていますので、ぜひお立ち寄りください。
【文:佐々木悦也/高月観音の里歴史民俗資料館 学芸員】
▪東京長浜観音堂 詳細情報
東京長浜観音堂は、観音文化の保存伝承の支援者を得るため、2021年7月にオープン。約2か月ごとに観音像を入れ替えて展示を行っています。
開設場所 | 「東京長浜観音堂」(JR東京駅八重洲口から徒歩5分) 東京都中央区日本橋2-3-21 八重洲セントラルビル4階 |
開設期間 | 2021年(令和3)7月10日〜2022年(令和4)2月27日 ※第4期「千手千足観音立像」は、1月12日(水)から2月27日(日)まで |
入館料 | 無料 |
休館日 | 月・火曜日 / 祝日の翌日 / 年末年始(12月27日~1月4日) ※月曜日が祝日の場合、火曜日のみ休館 ※火曜日が祝日の場合、水曜日休館 ※祝日の次の日が土曜日の場合、土曜日も開館 |
開館時間 | 10:00〜18:00 |
関連サイト | 特設サイト「東京長浜観音堂」 公式HP「びわこ・長浜 観音の里」 Facebook「観音の里 長浜」 |
チラシ(第4期) | 東京長浜観音堂(第4期) |