2021年度(2021年4月~2022年3月)も新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、予定されていた行事の延期・縮小などを余儀なくされた1年でした。そんな中で築地本願寺は新しい生活様式に則りながら、行事開催方法の試行錯誤や新規の施策を進めてきました。ここに2021年度の活動報告と2022年度に予定されている大きな行事などをご報告いたします。
▪これからも時代に対応できる“スマートテンプル”を目指して
2021年度を振り返ると、新型コロナウィルスの感染者数は増減を繰り返しました。また変異株「オミクロン株」が現れ、3回目のワクチン接種が始まるなど、残念ながら年間を通して落ち着かない年となりました。
しかし、そのような状況下であっても、社会全体としては対面形式のリアルイベントが復活しつつあり、築地本願寺も人数制限を行いながら、少しずつ定例行事などを再開しております。日々ご参拝いただく皆さまや行事にご参加いただいた皆さまには、感染対策にご理解ご協力をいただき、無事に2021年度を終えることができましたことを改めて感謝申し上げます。
2021年11月に築地本願寺は第二回目となる不安調査を実施しました。今回は全体として肉体的、健康関連の不安度は減少する一方、物価高騰や収入面の不安など、経済的な観点での不安が大きいことが分かりました。また、若年層(18-29歳)からは「新型コロナウィルス感染拡大が収束した場合、オンライン中心の生活から環境が変わることや、新たなコミュニティに入れるのか心配」という不安の声も多数聞かれました。築地本願寺では本堂内に僧侶が常駐する場所を設置し、無料の僧侶相談を行っています。仏事に関する疑問・質問などから、「誰かに話を聞いてもらいたい。一人で考えるのはつらい。」といったご相談まで、どんなことでもお伺いしますので、ご遠慮なくお越しください。
もう一つ、築地本願寺では一般の方を対象に、施策やサービスの認知度や好意度を確認するアンケート調査を2017年の「寺とプロジェクト」開始以降、毎年実施しています。当院は認知度スコアは高いのですが、「敷居が高い」「僧侶が見えない」など一般の方が築地本願寺への距離を感じていることが分かりました。そこで気軽に入れるお寺を目指して様々な施策に取り組み続けた結果、おかげさまで今回の調査で好意度の数値がアップしました。行事や法要、合同墓、築地本願寺倶楽部、オンラインでの各種サービスなど、様々な場所で皆さまとのご縁が確実に結び始めていることの現れであると大いに感謝すると共に、さらに絆を深め、頼っていただけるお寺になるよう努力して参ります。
新型コロナウィルスがいつ収束するのか、相変わらず私たちには予測もつきません。昨年のニュースレターでも書かせて頂きましたが、お釈迦様の説かれた『八正道(はっしょうどう)』(苦しみを離れ、涅槃に導くための教え)という八つの生き方のうちの一つ、『正精進(しょうしょうじん)』という言葉のように、「正しく努力する」生き方を日々実践していくのみです。
困難な状況にある方、孤独を抱えている方、一人でも多くの方々にいつでも寄り添えるよう、2022年もお寺の門を開いて私たちはお待ちしております。
築地本願寺 宗務長 安永雄玄
▪2021年度の活動報告
「安心シニアライフ エンディングフェア」開催
これからの人生を生き生きと暮らすため、人生の整理と健康的な生活をご提案する「安心シニアライフ エンディングフェア」を2021年10月8日~10月9日、2022年3月18日~3月19日の2回、中央区・中央区社会福祉協議会の後援のもと開催いたしました。
当日は生前整理や葬儀など終活関連の専門家によるセミナーの他に、終活について気軽にご相談いただける、葬儀社や税理士事務所による各種相談ブースを設置しました。
また出展企業・団体による、健康づくりや生き生きとしたシニアライフを応援するさまざまな体験をできるコーナーも用意。来場者数は2回合計で約6500人でした。ご参加いただいた方からは「個人では問い合わせするのが大変な内容だが、まとめて情報がもらえるのはありがたい」など好評の声をいただきました。エンディングフェアは2022年度も開催予定です。
「オンライン視聴者参加型の“除夜の鐘”」の初開催
築地本願寺では例年、除夜会にご参拝いただき、希望された参拝者の方に除夜の鐘を撞いていただくのが通例でした。しかし新型コロナウィルス感染拡大予防のため、2020年度より参拝者の鐘撞きを中止し、YouTubeでの僧侶による鐘撞きのライブ配信を行ってまいりました。2021年12月は、オンライン配信イベントが浸透してきたこともあり、「あなたと除夜の鐘プロジェクト」と題し、除夜の鐘にオンライン参加できるイベントを企画しました。
事前にご応募いただいた方の中から抽選で50名様の当選者を選び、お名前と新年への思いを込めた漢字1文字を表示しながら、当選者に想いを寄せて僧侶が一打ずつ、心を込めて除夜の鐘を撞きました。応募数は約450件と多数の方に応募をいただき、その模様を配信した公式Youtubeチャンネルも多数ご視聴いただきました。
築地本願寺では今後もYouTube等オンラインツールを併用し、長期化する新型コロナウィルス拡大の状況下でも多くの方にご参拝いただける環境を整えてまいります。
法要マルチ言語配信 HP&パンフレット多言語化対応
築地本願寺では2020年より様々な国籍の方にも仏教や浄土真宗の教えにふれていただく機会を作るべく多言語化に力を入れております。
2020年11月には英語版YouTubeチャンネル Jodo Shinshu Tsukiji Hongwanji(https://www.youtube.com/channel/UCVBY1rzHwzjnpCR-0lGdYnA)を開設しました。こちらのチャンネルでは「お坊さんのひと口法話」や、築地本願寺や仏教、浄土真宗などの解説動画を英語で配信しております。
2021年11月11日から16日の報恩講の法要では、日本語チャンネルと合わせて英語チャンネルでも同時生配信いたしました。配信では法要の流れに合わせて英語字幕・解説を表示し、日本に住む外国籍の方のみならず、海外からもオンラインでご参拝いただきました。
またその他にも月に1度の英語法座(ライブ配信あり)ウェブサイト・案内パンフレットで多言語(英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ドイツ語・ロシア語)に対応しております。今後もさらなる対応拡充を進めてまいります。
SDGsプロジェクト「築地テンプルモーニング」1周年
築地本願寺では2020年度よりSDGsプロジェクトチームを立ち上げ、「持続可能なより良い世界」への目標達成に向けて、様々な活動に取り組んでまいりました。
その一環として2021年3月より開始した「築地テンプルモーニング」が2022年3月で1周年を迎えました。築地テンプルモーニングとは、7時から実施する晨朝勤行の後、約20分間参拝者と共にお寺を掃除したり、「朝の活力ワード」と題した5分程度の法話を僧侶から参加者の方にお話しする取り組みです。現在は毎回20名程度にご参加いただいています。参加者からは「お寺の掃除をする機会はなかなかないので貴重な経験ができる。」「掃除してすっきりとした気持ちで出社できる。」などご好評の声をいただいております。
3月11日に行われた築地テンプルモーニングでは、1周年を記念して築地本願寺公式ロゴマークのレインボーバージョンのバッジを参加者みなさまにプレゼントしました。
このレインボーロゴは「誰も置き去りにしない」というSDGsの考えに基づき、ジェンダーやLGBTQ差別のない誰もが心豊かに生きてゆける社会づくりを目指す築地本願寺のSDGs活動を表すものとして作成されたものです。
築地テンプルモーニングは今後も引き続き開催してまいります。開催日は公式ウェブサイト、SNSでご案内予定です。
▪2022年度に予定している主な予定
佃島分院が7月竣工予定
築地本願寺佃島分院は、築地本願寺の5つ目の分院として2020(令和2)年4月に開設しました。その前身は「佃島説教所」であり、1657(明暦3)年の明暦の大火で浅草御坊(西本願寺)が焼失後、八丁堀沖の海上を再建地として埋め立てることに尽力された佃島門徒のための、日々の念仏道場がその由来です。
現在は上層階に老人福祉施設を併設した建物の建設工事が、2022(令和4)年7月末竣工予定に向け進んでいます。
新しい建物は、地上 9 階・地下 1 階になります。2階が本堂で、約 80人を収容でき、1 階には公衆トイレや飲食店などを設けます。また3階から9階については介護付き高齢者住宅事業が入ります。建物内の福祉施設利用者や近隣地域住民に対して、僧侶が傾聴活動を行うことで、都市開教における新たな伝道教化のモデルとなることを目ざします 。
佃島分院は、佃島・月島地域のみならず、新たな街づくりが予定されている豊洲・有明地域への都市開教事業の拠点として活動を拡大するとともに、老人福祉施設誘致によって同地域の社会福祉事業推進の一助ともなれるよう、尽力してまいります。
竣工後は9月に入居が開始される予定ですが、報道関係者向けの内覧会も予定しています。詳細は追ってプレスリリースや築地本願寺公式ホームページにて発信しますのでご注目ください。
関東大震災100回忌追悼法要
今年2022年は、1923年(大正12年)に発生した関東大震災から99年、つまり「100回忌」にあたり、築地本願寺では震災のあった9月1日前後に追悼法要をお勤めする予定になっています。
関東大震災に伴う火災によって、築地本願寺(当時は築地別院)の木造の本堂は焼失しました。その後建てられたのが古代インド・アジア様式で鉄筋コンクリート造りの現在の本堂です。今でこそ当たり前の鉄筋コンクリート造りの建物も、当時日本のお寺では非常に珍しい物でした。震災による火災によって本堂を失った教訓を生かし、地震や家事に強い本堂が建てられたのです。
また築地本願寺所蔵の「本願寺救護部記録」や映像資料「関東大震災記録映像」には震災当時の記録が鮮明に残っています。その中で築地本願寺は浄土真宗本願寺派による復興支援の中心として大きな役割を果たしたとされています。なお、この映像資料は貴重なもので、テレビドラマなどでの利用希望も多く頂いています。
そして今、築地本願寺では次にいつ起こるか分からない災害に備えるため、避難所として機能できるよう災害備蓄品を常備し、自治体との連携を深め緊急時に協力できる体制を整えています。
築地本願寺とは切っても切れない関係にある関東大震災の100回忌追悼法要の詳細は今後ホームページなどで発信します。
※写真提供:松井家(松井建設株式会社) 写真の複製・引用はお控えください
親鸞聖人御誕生850年立教開宗800年慶讃法要について
2023年は浄土真宗本願寺の宗祖親鸞聖人がご誕生されて850年、その翌年2024年は親鸞聖人が浄土真宗を開かれた「立教開宗」から800年という節目の年をお迎えします。
築地本願寺の本山である京都・西本願寺では2023年3月29日から親鸞聖人のお誕生日である5月21日まで、5期30日に渡り「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」をお勤めいたします。
また築地本願寺でも本山の法要の翌年2024年を中心に法要や記念行事を予定しています(詳細な内容は未定)50年前の親鸞聖人御誕生800年・立教開宗750年の節目の法要の際には、日本武道館を使用して行事を行ったと記録が残っています。この度の宗派を挙げたお祝いの法要がどのような形となるのか、本山の法要の詳細は浄土真宗本願寺派の公式ホームページをご確認いただき、築地本願寺の法要は続報をお待ちください。
【浄土真宗本願寺派ホームページ】https://www.hongwanji.or.jp/
▪築地本願寺 今後の予定
▪浄土真宗本願寺派 築地本願寺について
築地本願寺は、京都の本願寺(西本願寺)を本山とする浄土真宗本願寺派の寺院です。現在の本堂は1934年に落成。オリエンタルな雰囲気をもつ外観と、浄土真宗寺院の伝統的な造りの内観、さらにパイプオルガンやシャンデリア、ステンドグラスもあるユニークな礼拝施設です。本堂や正門などは2014年に国の重要文化財に指定されました。
“開かれたお寺”のスローガンのもと、誰もが入りやすく、親しめる場所を目指して、境内にカフェ・ショップなどが入ったインフォメーションセンターもあります。
新型コロナウイルス感染症拡大以降は、オンラインで法要をお受けしたり、YouTubeチャンネルに法話をのせるなど、非対面でも教えにふれられる機会を多数設けていますので、ぜひHPをご覧ください。
【ロシア連邦によるウクライナ侵攻に対する声明】
私たち浄土真宗本願寺派は、いかなる理由があろうとも、人命を軽視し、武力で一方的に現状を変更しようとする暴力的な行為に抗議し強く反対の意を表します。
浄土真宗本願寺派 築地本願寺
宗務長 安永 雄玄