何かと物議を醸したオリンピックの開幕直前、外務省後援による大規模なオンラインイベント『インバウンドサミット2021』が開催された。総勢80名以上の観光キーマンが登壇し、「日本のインバウンドは終わったのか?」をサブテーマとして、コロナ後のインバウンド観光戦略について熱く真摯な議論が展開された。
そのなかで、ひときわ異彩を放つ登壇者が衆目を集めた。知る人ぞ知る、天台宗の僧侶、秋吉文暢(あきよし・ぶんちょう)師。「鬼が仏となった里」「神仏習合発祥の地」としても知られる、大分県国東半島にある文殊仙寺(国東六郷満山霊場第25番札所)の住職である。
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動画『インバウンドサミット2021 日本のインバウンドは終わったのか?』文殊仙寺 秋吉文暢住職「宇佐国東半島を巡る会 越境クラウドファンディング」(25:28〜) ※越境クラウドファンディングとは、日本国内だけでなく国境を越えて世界から資金鳥達が可能なクラウドファンディングのこと
秋吉住職は、過疎化が進む国東にあって、地元の観光プロモーション団体「宇佐国東半島を巡る会」(2014年設立)の事務局長として、地域を盛り立てようと努めている。インバウンドサミットでは、神仏習合の色合いが濃い奇祭「修正鬼会(しゅじょうおにえ)」(重要無形民俗文化財)を、コロナ禍にあっても断絶させずに開催するために挑んだ越境クラウドファンディングについて熱く語った。
そこで寺社Nowは、地域活性の重要な観光キーマンである秋吉住職を直撃し、地方寺院の住職が地域のプロデューサーとしてさまざなな取り組みに挑戦することの意義と可能性について尋ねた。
天台宗 文殊仙寺:秋吉文暢(あきよし・ぶんちょう)住職 1978年、大分県国東市生まれ。大学卒業後、東京都内の不動産会社に就職。友人らと起業するなど、充実した日々を送る。2008年、妻子を伴って帰郷し、生家である文殊仙寺に入寺。2014年、六郷満山の寺院群からなる霊場会を発展させて「宇佐国東半島を巡る会」を設立し、事務局長に就任。地域のプロデューサーとして活躍する。2018年には、「国東半島宇佐地域・六郷満山開山1300年誘客キャンペーン」を主導し、成功に導いた。
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平安時代から変わらぬ風景が残る郷、田染荘(たしぶのしょう)。国東(くにさき)半島を含む一帯は、世界農業遺産にも認定されている。この地に、1300年の歴史ある「鬼と仏」と、そして「人」をつなぐ伝統の文化が伝わっている
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熊野磨崖仏。巨大な岩壁に浮かび上がるように彫られた、くにさきを象徴する文化財の1つ
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川中不動。川の中の大岩に不動明王の磨崖仏が彫られている。洪水を鎮めるという信仰がある
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くにさきには、鬼に出会える夜がある。それが旧正月の法会「修正鬼会(しゅじょうおにえ)」だ
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「くにさき」の寺には鬼がいる。人々と鬼とが長年の友のように繋がれている。一般に恐ろしいものの象徴である鬼だが、この地では鬼が人々に幸せを届けてくれる。修正鬼会の晩、仏の化身とされる鬼が、松明(たいまつ)を持って大暴れする。炎には法力が込められ、松明で背中や尻を打たれると、無病息災・五穀豊穣などのご利益が得られるという。コロナ禍で観光客も消え、1300年の伝統がついに途絶えるかと思われたそのとき、逆に全世界に向けたあるプロジェクトが動き出した