食材を活かしきる!けんちん汁で伝えたかった心—臨済宗建長寺派大本山建長寺「和カフェ点心庵」(神奈川県)—

【寺社Now20号(平成30年7月発行)】より

平成30年(2018)3月1日、北鎌倉にある臨済宗建長寺派の大本山・建長寺の門前に「和カフェ 点心庵」がオープンした。建長寺の禅の心を感じてほしいとの願いから、店の奥には坐禅堂も併設されている。
実はこの場所には、もともと和食などを提供する別の飲食店があった。2017年に同店が閉店し、建長寺がその建物ごと土地を買い取ることになった。

夕方時には鎌倉らしい夕日が窓から差し込む店内。靴を脱いで上がる

地元飲食企業と協働し、参拝者が休める場所を

「建長寺では年に2回、修行僧たちが檀家さんを招いて精進料理を振る舞う機会があるのですが、参拝いただいた皆様に、日常的にお食事をしていただける場所はありませんでした。そこで管長が、寺として飲食店の運営を考えました」

そう話すのは、カフェ事業を担当する建長寺の村田靖哲総務部長。当初は吉田正道管長の意向を受けた村田氏を中心に、自分たちの手で運営することを試みたという。しかし、日々のお勤めの傍らカフェの営業まで手がけることは容易ではなく、結局、運営をプロに任せることとなる。

白羽の矢が立ったのは、神奈川県内に中華やイタリアンなど10店舗を構える地元の飲食企業・株式会社千里。同社のイタリアン事業部で総料理長として腕を振るう髙橋博文氏との二人三脚で、店づくりが始まった。

禅には『食材を活かしきる』という教えがあり、野菜の皮やヘタ、尻尾の部分まですべて使ってつくられたのが、建長寺発祥と言われるけんちん汁。写真は塩むすびと自家製のぬか漬けがセットになった伝承 建長汁(けんちん汁)

建長寺との一体感を出すために、まず、通りに面していた入り口を寺域内に設けた。そして建長寺が代々受け継いできた「けんちん汁」を看板メニューに据えることに。ただし、そのレシピは僧たちの口頭で伝承されてきたもの。店で提供するためには、レシピを統一するところから始める必要があった。吉田管長はじめ建長寺の数名から作り方の指導を受け、「平均となる味を探った」と髙橋料理長。寺側も試食を繰り返し、納得のいくまで意見を出し合った。

 「建長寺のブランドを背負った以上、その名に泥を塗るわけにはいきません。地元のこだわり抜いた食材を使うのはもちろん、老師やお寺の方々に料理をチェックしていただいてから、お客様に提供しています」

地元のスパイス会社とコラボした鎌倉野菜カレー

三浦の地卵を使った玉子焼サンド

目の前で石臼挽きした抹茶をふりかけてくれる石臼挽き抹茶ティラミス。そのパフォーマンスも嬉しい

髙橋料理長(左)にとって、村田総務部長(右)はなんでも相談できる心強い味方。取材中も新たな構想を相談していた

同年7月には完全予約制でディナーコースの提供も始めたが、村田氏は、「いずれは点心庵の坐禅堂で、かねてからの希望であった坐禅会を開きたい」と、今後の夢も語る。その期待に応えるべく、カフェのスタッフは全員で京都の老舗茶屋に研修に行き、茶道も学んだ。

「和敬静寂」。寺と地元飲食企業が互いのつながりを考え、協働する姿勢にも、禅の心が込められている。

カフェスペースの奥にある坐禅堂は、四季を感じる庭園につながっている。いずれは一般客に禅の心を説く坐禅会を開くことが目標だ

食事を楽しみながら、禅に気軽に触れてほしい

「コミュニティホールとまでは言いませんが、お寺は本来、人の集まる場所です。これまでも境内で坐禅会を開催してきましたが、より気軽に体験できる場所を設けることで、禅を通してもっとお寺に足を運んでいただけたらと考えています。あわせて、建長寺の思いを込めたカフェで食事をしていただくことで、禅に触れていただくきっかけができれば嬉しいですね」(村田氏)

寺域内に養蜂場を設け、そこで収穫されたはちみつも点心庵で提供されている。そのはちみつを使った鎌倉はちみつプリン。盆には建長寺吉田管長が大好きな猫を、ふるった粉糖で表現している

紫陽花の花を彷彿させる点心庵オリジナル 抹茶パフェは生チョコもジュレもすべて手作りだ


建長寺 和カフェ点心庵

〒247-0062
神奈川県鎌倉市山ノ内7
電話:0467-55-9350
HP:http://tenshin-an.com


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監修:全国寺社観光協会

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