シリーズ「参道をゆく」では、お寺や神社と地域が協力して参道を活性化しようとしている、各地の〝参道まちづくり〟の事例を取材。その第1弾は、往時の姿に新たな魅力を加え、門前に活気を取り戻そうとしている、曹洞宗大本山永平寺×福井県×永平寺町の共同事業「永平寺門前の再構築プロジェクト」をご紹介します。
永平寺を大切な場所として三者が活性化に動いた
令和元年(2019)7月26日、曹洞宗大本山永平寺門前に「永平寺 親禅の宿 柏樹關(はくじゅかん)」が誕生した。これは単に宿泊施設が永平寺門前に1軒増えたということに留まらず、永平寺と福井県ならびに永平寺町という寺院と行政が垣根を越えて協働し、門前の再活性化を実現しようとする象徴的な事業の幕開けを意味している。
きっかけは、平成22年(2010)、春の嵐ともいうべき強風で、永平寺山門前の五大杉が倒れたことにある。これを契機として永平寺では、安心安全を求め、そのために何をすべきかを考える「禅の里事業」が始動した。同時に、禅の里の〝まちづくり〟について、門前との協議が始まった。
一方で、舞鶴若狭自動車道が平成26(2014)年に全線開通し、翌年には北陸新幹線の開業、中部縦貫自動車道の延伸など、交通網の整備が大幅に進展。平成30(2018)年に「福井しあわせ元気国体」が開催されたことを皮切りに、令和2(2020)年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピック、令和7(2025)年には大阪万博の開催が控えており、行政側は国内外から誘客できる絶好の機会だと考えていた。
こうした状況のなか、福井県が永平寺に声をかけ、永平寺町も加えた三者による「永平寺門前の再構築プロジェクト」が発足した。その第1弾が「永平寺 親禅の宿 柏樹關」のオープンという位置付けになる。
県が、1600年代の古地図に基づいて門前を流れる永平寺川の河川改修工事を担当。町は、無電柱化をはじめ旧参道を整備し、参道入口に新たな観光案内所も設置した。そして永平寺が宿泊施設を建設した。